西部開発政策実施後資金投入の効率性の変化
任 雲・馮維江
目次
I はじめに
II 成長理論と資本の役割
Ⅲ データとモデルの説明
Ⅳ パネル・データ分析の結果
Ⅴ 結びに変えて─政策含意
I はじめに
中国の「西部大開発」戦略(Western China Development Drive、以下、WCDDと略す)が1999年に提起され、翌年に正式に実施されて以来、ちょうど10年を経過した [1]。その大開発戦略は、21世紀中頃までに、沿海地域と西部地域の地域格差を縮小させ、西部地域の少数民族や生態環境などの諸問題を解決することを目指すための長期的政策である。政策対象地域は、重慶市・四川省・貴州省・雲南省・チベット自治区・陝西省・甘粛省・寧夏自治区・青海省・新彊自治区・内蒙古自治区・広西自治区などの12の省・市・自治区が含まれている。背景は地域格差問題にあるが、それ以外に、①少数民族間題への対応、②内需拡大の必要性、③生態環境保護の必要性といった背景もある(日置,2004)。そして、西部大開発戦略が策定された当初、10年間の政策目標と政策措置として、①インフラ建設の加速、②生態環境の保護・改善、③農業基盤の強化、④産業構造調整(比較優位があり、特色がある農業・鉱業・観光業の育成など)、⑤科学技術・教育の発展、⑥各種社会事業の発展、などが定められた。このうち、インフラ建設と生態環境の保護・改善が開発初期の重点とされていた。また、これらの政策を円滑に実施する手段として、①資金投入の増大、②投資環境の改善、③対外・対内開放の促進、④人材誘致を促進する各種政策、⑤西部地域の科学技術・教育の発展促進政策、⑤社会文化事業の発展促進などにかかわる政策が採用されている(加藤,2003,第6章;加藤2005,pp.321-322)。
WCDD政策の実施の10年間に、西部経済が様々な変化が生じている。その政策の効果について多くの関心が集まっている。しかし経済学界のWCDDについての研究が意外に少ない [2]。とくに政策実施前後の経済成長方式の変化や政策の効果に関する定量分析は欠けている。また、定量研究の多数は、東部と西部、または東部・中部・西部の比較研究に重点をおき、異なる地域の「成長の収斂」を検証している [3]。西部地域内の経済成長変化に焦点を絞る定量分析は少ない。
例外として、Wang and Wei(2004)は統計データでWCDDのインフラ建設や環境保全における貢献を描写し、非政府部門投資に対する誘致不足、及び投資環境と国際化レベルの不足などの欠点を指摘した。ただし、彼らの論文は計量的分析がなく、厳密さが欠けている。最近、畢(2008)は、新疆自治区のデータを用いて、生産関数を構築し、chow testでWCDD実施後経済成長が加速していると実証した。そして、劉・王・胡(2009)は、1987-2007年の中国各省のパネル・データを用いて、GMM手法でWCDD前後の経済成長のパターンの変化を実証分析し、開発政策が西部の平均GDP成長率を1.5%押し上げる効果があり、インフラ整備と資金投入がもっとも経済を牽引し、教育・科学技術の貢献が依然として顕著な改善が見られないとの結果を明らかにした。
本稿は、劉・王・胡(2009)などの分析手法と異なり、資本ファクターの面からWCDDの効果を検証することにする。具体的にいえば、1991-2008年の西部地域の資金投入とGDPのデータを用いて、計量分析を行い、2000年のWCDDが実施される以前とその以後に、西部の経済発展に資金投入の効率性が変わったかどうかを検証し、西部ではいまどのような成長特徴があり、課題とは何か、ということを探りたい。
本稿の構成は以下の通りである。第Ⅱ節において様々な先行研究を紹介し、なぜ資金投入だけに絞って、経済成長の特徴を検証するかについて、その理由を説明することにする。第Ⅲ節で資金投入の統計量の近年の変化特徴を説明し、その上に計量モデルと分析方法を示す。第Ⅳ節において、計量分析の結果を整理し、政策実施前後において資金投入の効率性及び経済成長のパターンが変わったかどうか、またどのように変化したのかを分析する。最後に、計量分析の結果に基いて、政策的含意をまとめることにする。
Ⅱ 成長理論と資本の役割
新古典派成長理論(Solow,1956)及び内生的成長理論(Romer,1986; Lucas,1988)は、いずれも資本が長期的経済成長の源泉ではなく、継続的な技術進歩こそがその源泉であると主張している。例えば、ソロー・モデルでは、貯蓄率と人口成長率を一定とすれば、労働投入量1単位当たりの資本ストックkが最終的に安定し、GDPも定常状態に収斂するが、技術進歩が連続的発生し、生産性トレンドがあれば、経済が定常状態に収束した後でも、1人当たりの資本やGDPが継続的に成長できる、ということが示されている。他方、内生的成長理論は、技術進歩が企業の技術革新(Romer,1986)や教育投資や訓練などによる人的資本の拡大(Lucas,1988)によって生じているため、経済全体の限界生産性が逓減することがなく、経済の長期的成長が実現できると理論を展開している。
成長理論では経済成長のファクターがそれぞれ独立していると仮定されているため、一般的に言えば資本の貢献を低く評価する傾向があると考えられる。また、ソロー・モデルに基づく成長方程式で経済成長における各ファクターの貢献度を計測するときに、資本と技術の相互影響がすべてソロー残差(Solow Residual)に括られているため、資本の貢献も相対的に矮小化されがちである。しかしAbramovitz(1993)が指摘したように、経済成長において各ファクター間の関係はモデルよりずっと複雑であり、技術の進歩の背後にも、有形・無形資本の投入が大きいな役割が果たしている。
成長理論は技術進歩を強調しているが、多くの実証研究が表明したように、開発の初期段階特に初期工業化の局面においては資本の役割が非常に大きい。例えば、Abramovitz(1993)は、アメリカ19~20世紀の長期的経済成長に対する実証研究を通して、異なる段階において資本、労働及び技術の役割が変わり、1855-1890年のアメリカの経済成長には資本投入の貢献が大きく、その以後に技術の進歩が中心的役割を果たした、という結果を明らかにしている。また、速水(1995,133-135)によれば、1908-1938年の日本経済成長には、資本の貢献が圧倒的であり、1955-1964年の高度成長期では、技術進歩の役割が大きくなった傾向が示されている。
では、中国のケースで、とりわけ西部の経済成長を考察する上で、成長の最も重要なファクターはどちらなのであろうか。
1997年アジア金融危機以後、Krugman (1998)は「東アジアの幻」の持論で、中国の経済成長に疑問を投げた。彼は、アジア経済の成長の源泉が資本の投入で、技術進歩ではないと結論し、このような成長が持続的ものではないとしている。彼の計測で、新興アジア諸国のTFP増加率はほぼゼロであった。易・樊・李(2003)はこの結果に反論し、発展途上国のTFPの計算方法を改善する提案を行ったが、その具体的な計算を行っていない。しかし郭・贾(2005)が易網らの提示した方法を利用し、2004年までの中国の経済成長パターンを分析したところ、TFPの増加率及び経済成長への寄与度がともに低い、成長はやはり資本投入によるという結論になった。その他、孫・任(2005)の1981-2002年のTFPの測定でも、資本投入が中国経済成長の主な理由であるとの結果が得られた。こうしてみれば、Krugman の指摘した通り、中国経済全体の成長パターンは、欧米先進国の初期段階と同じに、主に資本投入による成長だと結論付けられる。
ただし、中国各省間の経済成長性の格差を解釈する際、郭・趙・贾(2005)、彭(2005) 、鄭・胡(2005)、傅・呉(2006)などの諸研究は、計算方法では異なりがあるものの、TFPの増加率が最も重要な説明変数であると、いずれも類似した結論に至っている。彼らの分析によれば、西部など経済の遅れている地域では、そのTFPの成長率が沿海など東部より低いため、格差が拡大していたのである。
以上の先行研究をまとめて見れば、資金投入は中国の経済成長においてもっとも重要な役割を果たしている。とりわけ、西部地域のTFP成長率は中国の沿海など発達地域よりもさらに低く、資本投入の役割は一層大きい。実際に、西部各地は常に外部資本の誘致を致上の政策として必死になっており、西部の工業化も主に初期段階であり、投資の増加で資本装備率や資本係数の上昇による経済成長を実現する段階にあると思われる。
以上のように、理論及び現実からみても、西部地域の経済成長を研究する際、資金投入と経済成長との関係を分析することは重要であり、資本ファクターの変化を着目し、WCDD政策後成長パターンの変化の有無を検証するのも妥当であると思われる。
ただし、われわれは本稿において直接に成長モデルを使って計量分析をしない。成長モデルは、資本の増加が貯蓄に等しく、閉鎖的経済を前提としているが、西部経済は明らかに資金の面において閉鎖的ではない。財政投入の大半は中央財政の移転であり、国内貸出の流出入、そして外資の流入など、多様な外部資金が経済成長に貢献している。そこでわれわれは、西部における各年度の固定資本の形成(すなわち固定資産投資総額)の中に各類型の資金のGDPに対する貢献度、及びWCDD政策実施前後その寄与の変化を測ることで、西部の経済成長のパターンに変化があったかどうかを検証する。
Ⅲ データとモデルの説明
固定資産投資総額を指標として、東部と比べて見ると、西部への資金投入は明らかに少ないである。図1でわかるように、90年代以来、西部と東部の固定資産投資の差額は拡大の趨勢である。1999年のWCDD政策の実施もその差額の拡大に歯止めを掛けられなかった。また、90年代半ばから、西部対東部の投資比が幾分増加したものの、全体的に見れば40%以下で、依然として低い水準に止まっている。とくに2002-03年に、その比が下降したこともあり、西部への投資が相対的に不安定であることがうかがわせる。
図1 1991-2006西部と東部地域の全社会固定資産投資(億元)
注:東部と西部の分類は、中国地域経済学の標準的分類に従う。
東部は北京、天津、河北、遼寧、上海、江蘇、浙江、福建、
山東、広東、海南省を含む。
出所:1991-2005年『中国統計年鑑』及び『2006年国民経済
と社会発展統計公報』により作成。
西部の資金投入には、固定資産投資の分類に従い予算内財政投入、銀行融資(国内貸出)、外国直接投資、企業の自己調達資金(内部留保など)及びその他が含まれている。図2は西部10省・自治区(四川・重慶を除く)の固定資産投資における各類型資金の割合の推移を表している。
まず、各類型資金の割合を見れば、自己調達資金及びその他の資金はもっとも大きな割合を占めており、その次は国内貸出である。そして、外資は90年代半ばまで予算内財政投入(財政移転)と匹敵していたものの、その後低迷し、全体的にその占める割合も非常に小さい。
次に、90年代以来の推移を見ることにする。自己資金の占める割合は97年以降全体的に緩やかな減少したが、2002年後は再び上昇し、近年に8割台まで接近している。一方、国内貸出の割合が2000年以降幾分上昇したが、近年連続的に下降している。また、外資の投入比率は、全期間を通じて一貫して減っていて、08年に1%を切っている [4]。注目する項目は、西部開発政策の中に、予算内財政投入(中央財政の移転は大きい)という最も政策性の強い資金である。その占める割合は、90年代前半の低減と比べてWCDD政策実施の前後から上昇した。全体的に見れば、2000年以降の財政投入の占める割合が90年代の平均よりも高くなっている。これはWCDDが実施されたあかしではないかと思われる。ただし近年、財政投入の比率は再び後退し、1割を割れている。
図2 西部固定資産投資における各類型の資金の占める割合
出所:『中国西部経済統計年鑑2001版』、2001-2003年各省経済統計年鑑
及び『中国統計年鑑』2004年後関係年版により算出・作成。
理論上、高度に成熟した完備的市場経済では、類型の異なる資金にも同じ効率性があるはずである。しかし中国のような初期段階にある市場経済システムにおいては、政策的優遇や保護、及び市場の未整備などにより、価格が市場の需給関係だけを反映せず、各類型の資金運用の効率性や経済成長に対する寄与もかなり異なると考えられる。一部の先行研究も、中国にある特殊な類型の資金投入の経済成長への貢献度を計測し、各類型資金の効率性や寄与の異なりを探った。たとえばChen and Feng(2000)は省ごとに回帰分析し、民営資本が経済成長の主因であると結論付けている。これに対して、Lee(1994)、Dayal-Gulati and Husain(2000)及び張(1999)などは、外資の役割が最も大きいと分析している。
確かに西部においても、資金の類型が多く、使途が多様で、異なる性格の資金は異なる役割を果たしている。たとえば、三峡ダム建設に伴う移民と建設資金は、特別使途の目的で運用されている。その他、中央政府は交通、電力、水利、郵政、ラジオ・テレビなどの西部インフラ建設に、異なる投資に異なる優遇政策を打ち出している [5]。
こうして、西部経済の成長における各類型の資金の運用効率性を検討する必要があると思われる。
本稿では、GDPを従属変数とし、固定資産投資の各類型資金、すなわち予算内財政投入(G)、銀行貸出(L)、外資(FDI)、自己調達資金及びその他(E)を説明変数とする。また、固定資産価格指数M (1991年を100)、消費者価格指数CPI(1978年を100)をコントロール変数とする。データは西部各省・自治区の1991-2008年のパネル・データを使う [6]。説明変数のデータに関して、1991-2000年と2001-2003年は、それぞれ『中国西部経済統計年鑑2001版』とその後の各省の経済統計年鑑による。また2004-2008年のデータは、『中国統計年鑑』の関係年版による。他方、コントロール変数M、CPIと従属変数のGDPは、『中国統計年鑑』各関係年版による。ただし四川省の2003年以前の固定資産投資の類型別の統計データがなく、また重慶が97年以前四川省に属して、その後のデータも少ないため、その両地を除く。
まず、2000年後成長パターンに構造的変化があったかどうかを検証するために、G、L、FDI、Eの各説明変数に係数ダミーP(1999年以前は0、2000年以降は1)を付け、以下の係数ダミーモデルを立てる。
固定効果モデル
(1)
ランダム効果モデル
(2)
ハウスマン検定(Hausman test)を行い、モデル(1)と(2)からより相応しいモデルを選び、選んだモデルで係数の推計を行い、各変数の係数ダミーの有意性をチェックする。もし係数ダミーを含む項目(モデル(1)の第7-11項目、モデル(2)の6-10項目)の中に、ある項目の係数が有意であるならば、WCDD政策導入前後で構造的変化が発生したと判断できる。
次に、構造的変化が認められた場合に、以下の計量モデル(3)と(4)で、政策導入前(1991-1999年期間)と政策導入後(2000-2008年期間)の二段階に分けて、各種類の資金の効率性、言い換えればGDPへの寄与を期間別に測ることにする。
固定効果モデル、
(3)
ランダム効果モデル、
(4)
Ⅳ パネル・データ分析の結果
本文の計量分析は、EViews6を利用する。まず、モデル(1)とモデル(2)をハウスマン検定で行ったところ、固定効果モデル(1)が採択された。固定効果モデルで推計した結果は表1の2列目にまとめている。これにより、係数ダミーを含むFDI*P 及びE*Pの項目の係数は1%の水準で有意であり、またL*Pの項目では、10%の水準で係数が有意である。すなわちWCDD政策後、財政投入Gの効率性の変化があったかどうか不明であるものの、他の三類型の資金のGDPに対する寄与が確実に変わった [7]。したがって、2000年以降、資金投入の構造変化が生じたといえる。
次にモデル(3)と(4)を使い、政策導入前後の二つの期間において、各類型の資金のGDP寄与を推計する。
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モデル(3)と(4)のどちらを採択するかは、やはりハウスマン検定を行う必要がある。結果は、固定効果モデル(3)が棄却された。つまり各省のGDPの値は、当該省・自治区の独自の特性に左右されていない。西部全体は、より統一した成長特徴を有する可能性が高いと思われる。表1の第4、5列目は、モデル(4)によって推計された政策導入前と後の各変数の係数をそれぞれ示している。
モデル(4)の二期間の推計結果から、以下の結論が考えられる。
第一に、WCDD実施以来、西部の経済成長のパターンが変化した可能性が高い。というのは、1990年代と比べて開発政策実施後の期間においては、モデルのコントロール変数(M,CPI)の有意性はなくなったものの、財政投入Gと銀行貸出Lの係数の有意性水準は上昇し、また係数の値も自己調達資金Eを除いてすべて上昇した。すなわち、銀行貸出、財政投入資金及び外資のGDPに対する寄与が上昇したからである [8]。資金投入の効率性の変化パターンは、モデル(1)の分析結果とほぼ同じである。
第二に、各類型資金の効率性の変化を見れば、外資投入FDIの効率性の増加はもっとも顕著で、GDPへの寄与が大きくなっている。確かに西部における外資の投資額は非常に少なく、その割合も低いが、近年のFDI投資において大型投資が増え、投資の効率性が高くなっただけではなく、そのシグナルやスピルオーバーなどの外部効果も大きく、経済全体への貢献が上昇していると考えられる [9]。その次に、財政資金Gの役割もWCDD後に変化した。おそらく開発政策が財政資金の意図的応用と配分でそれなりに実効性が増し、財政資金投入の真水の効果が上がっている。さらに、銀行の貸出し額Lの経済成長における貢献度も倍くらいになった。その理由の一つは、1998年以後国有商業銀行の改革で銀行貸出の効率性が改善されたことにあると思うが、もう一つは、WCDD政策の影響で、西部における銀行貸出の配分の効率性が上がったことによるかもしれない。
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表1 推計結果(係数)
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モデル(1) |
全期間 |
モデル(4) |
前期(1991-1999) |
後期(2000-2008) |
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C |
347.5109
(10.41566)*** |
C |
170.6788
(2.372729)** |
1736.826
(2.915110)*** |
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G |
2.411707
(0.910663) |
G |
-1.549360
(-1.215336) |
2.438017
(4.852448)*** |
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L |
-0.114149
(-0.093493) |
L |
1.154600
(1.817025)* |
2.066645
(9.396647)*** |
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FDI |
-3.885088
(-1.540861) |
FDI |
3.618745
(2.884378)*** |
23.47405
(11.22230)*** |
|
E |
2.440674
(5.591067)*** |
E |
3.183565
(13.15129)*** |
1.027792
(21.79057)*** |
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G*P |
0.126320
(0.048843) |
M |
-3.247322
(-3.069629)*** |
8.826084
(0.895204) |
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L*P |
2.133047
(1.777511)* |
CPI |
1.345122
(3.798965)*** |
-6.841395
(-1.324212) |
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FDI*P |
28.11509
(9.151249)*** |
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E*P |
-1.474983
(-3.344720)*** |
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|
0.987218 |
|
0.945238 |
0.969225 |
|
F値 |
735.9869 |
F値 |
238.7766 |
435.6609 |
|
DW統計量 |
0.736293 |
DW統計量 |
0.741587 |
0.732756 |
注:*、**、***は、それぞれ10%、5%、1%水準で、統計的に有意であることを示す。
第三に、西部地域の固定資産投資において、占める割合の最も大きく、かつその割合も上昇している企業内部自己調達資金及びその他Eの効率性は、WCDD以来反って減っている。これは西部経済の問題点を突き止めている。つまり、西部経済の民間資本の形成と民間企業の役割は未だ小さく、企業自身の効率性も相対的に悪化していると考えられる。WCDD政策が実施されて以来、他類型の資金投入の効率性は上がっているが、企業自身の投資収益と効率の低下は、経済体内部の造血機能の弱体化を意味して、西部経済の持続可能な発展に大きなリスクをもたらしていると思われる。
Ⅴ 結びに変えて─政策含意
本稿は、WCDD実施前後の西部地域の資金投入の効率性の変化及び経済成長パターンの変化の有無、またどのような変化があったのかを計量的分析し、いくつか興味深い結果を明らかにした。ただし本稿の計量分析に、四川省と重慶市という二つ重要な地域のデータが欠けているため、やや遺憾である。そして、本稿は時系列のデータの処理、特に誤差の系列相関などの問題が残されているかもしれない [10]。より精密な分析は今後の課題としておく。
最後に、計量分析の結果に基づいて、本稿の政策的含意をまとめておこう。
第一に、西部は外資の誘致に力を一層入れるべきである。なぜなら、占める割合の最も小さい外資は、もっとも効率性を有しているからである。最近、中国東部地域の産業構造が変わりつつ、西部への外資の進出も以前より勢いが増している。その好機をいかに利用するのかは、西部各省の手腕に問われている。
第二に、WCDDに伴って一度大幅に増加した財政投入が近年その規模が相対的に後退しているが、一定期間において、財政投入規模(中央の財政移転の規模)の確保と拡大は西部経済発展にとって有益であり、必要である。というのは、財政投入の効率性もWCDD実施後、比較的に高くなっているからである。
第三に、銀行融資の面においても近年の比率が下降している。1998年以後、西部における銀行資金の東部への流出が大きな問題になっている [11]。WCDD政策実施して以来、西部の貸出資金の効率性が倍くらい上がったので、銀行資金の地域外の流出を制限する理由もそれなりの合理性があろう。
第四に、何よりも、民間資本と民間企業の活力と効率性を引き出さなければならない。任・羅(2008)も、西部の産業集積と産業発展のために、もっとも重要な課題が民間企業の成長と民間資本の活性化であると結論付けている。グローバル化と情報化の時代に、西部と外部との経済的リンケージがますます増える中、西部地域が外部資本の導入や産業移転を促進するなど、様々な手段を使って経済を発展させることは大変重要であるが、西部の地理位置と経済発展のレベルなどの要素を客観的に見れば、東部沿海のような経済成長のパターンを期待するのは無理であろう。やはり域内で企業家精神を育て、民間資本と民間企業の発展を通じて経済の活性化を高めることこそが、西部経済の持続可能な発展の要となるではないであろうか。
注
[2] われわれは、中国人民大学書報資料中心(http://art.zlzx.org/)の収録した中国経済関連の学術論文の中に、WCDDに関する論文の数を統計したところ、2000年の24件に続き、01年にピックの61件があったが、その後45件、15件、10件、3件、3件に、逐年大幅に減少してきた。ちなみに、このサイトが収録している中国経済に関する論文の総数は、年間大体2万5千件前後である。
[3] 例えば、王・樊(2004)、陳・徐(2004)、林・劉(2003)などは成長の収斂性を異なる角度から分析している。
[4] 任(2009)は、西部が吸収した外資が全国に占める比例も一貫して非常に低いと分析している。2002年西部へのFDIは全国の吸収したFDIの3.07%しかなかった。
[5] 例えば、国家財政部・税務総局・関税総局の『西部大開発税収優遇政策に関する通達』(財税(2001)202号)によれば、西部で交通、電力、水利、郵政、テレビラジオ事業を起こす企業の中に、営業額が全売上高の70%以上を占めるのならば、以下の優遇政策を得れる。内資企業の場合、開業以降の二年間で企業所得税が免除、その後の3年間に半額免除される。一方外資企業10年以上の投資項目であるならば、黒字収益以降の2年間に企業所得税が全額、その後の3年間に半額が免除される。
[6] 各変数のデータは時系列データのため、単位根検定を行ったところ、殆どの変数のデータの単位根の存在が棄却しないという結果が示された。しかし、松浦他著(2001,pp.247-248)が指摘したように、構造変化が起きた場合、単位根検定の検出力が著しく低くなる。本文の後の分析が示したように、構造変化が実際に生じていたため、単位根の存在が極めて判断しにくくなっていると考えられる。本稿は、単位根の検定結果を利用せずに、共和分の検定も行わないことにした。
[7] ランダム効果モデルで推計したところ、外資、自己資金及びその他の二種類資金の係数が高い確率で変化した。
[8] 財政投入の貢献係数は政策前において統計的有意ではない。従って、WCDD前後に、係数自身が負から正に転じたものの、政策実施以前の負は計量モデルにおいて確定できない。
[9] 外資系企業のWCDD後の進出による役割について、任・羅(2008)は成都のIC産業集積の例で分析している。成都では、代表的企業の進出によって、多大なシグナル効果がもたらされ、その後外資IC企業数社が短い期間で次々と進出した。
[10] 推計結果(表)で示しているように、WD統計量の値が三つとも比較的に低い。ただし、パネル分析で使われるWD統計量表(松浦他著,2009,p.386)では、T=9,N=10,k=6やT=18,N=10,k=8に対応する値がないので、誤差の系列相関があるかどうかは判断できない。
[11] 任(2005) は内陸の銀行資金の流出を実例で分析している。なお任(2009)は西部全体の銀行資金流出を説明した。また、劉世慶他(2005)も、西部大開発以来の西部の資金流出などの問題を詳しく纏めている。
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後記:本稿は、第一著者が平成16-19年度科学研究費基盤研究B『市場経済システム形成下での中国西部地区経済の国内・国際的リンケージに関する調査研究』(課題番号16402013)の研究成果報告書の一部を大幅に加筆・修正したものである。なお、第1稿の作成に当たって、石井敏先生から貴重なコメントを頂いたことを感謝する。ただし、すべての過ちは著者に帰する。
任雲 桜美林大学経済・経営系準教授
馮維江 中国社会科学院アジア太平洋研究所助理研究員 |